トイレの住環境整備の注意点
高齢者に合わせてトイレのリフォームや改修をする時の注意点が2つあります。
それは、立ち上がる時の空間確保と便器を置く位置です。
どちらとも間違えると使い勝手が悪くなります。
直すのにも大きく手間がかかります。
では2つの注意点をそれぞれ説明していきます。
立ち座りする空間の確保
便器前方の空間が狭いと立ち座りがしづらくなります。
和式便器を洋式便器に改修する時によく失敗する内容です。
人が椅子などに座っている状態から立ち上がる時に、2つの空間が必要です。
一つは頭を前に出せる空間です。
人は椅子から立ち上がる時に頭を前に傾けます。
頭を前に傾けないまま、ロケットのようにまっすぐ立つ事はできません。
実際に試してみるとわかりますが、
頭を前に傾けないままでは立てません。
なので、トイレに座っている状態で、前方に適度な空間がないと立ちづらくなります。
では立ち上がる時に空間とは、どれくらい必要なのでしょうか?
トイレの先端から前方の壁まで、大体50㎝以上必要です。
これより狭い空間だと立ちづらいでしょう。
昔の和式便器を洋式便器に改修する時によく失敗します。
もともと和式便器の空間が狭いからです。
普通だとトイレの空間は長手方向に180㎝程ありますが、和式便器だとその2/3程、136㎝くらいしかありません。
180㎝での空間での改修では問題ありませんが、136㎝の空間では便器の大きさを考えたら、前方の空間が狭くなってしまいます。
なので、その時は小型サイズの便器を使用して空間を確保する方法をとります。
脚を引く
もう一つの必要な空間があります。
それは足を引ける空間です。
立つ時に脚を後ろに引けないと立ちづらくなります。
また昔のポータブル便器にある特徴でもあります。
トイレの改修というより、
素人が作る椅子によく見かけます。
椅子やトイレの強度の確保のために、足の動きを封じている場合があります。
脚を引く空間、踵(かかと)を後ろへ引ける空間が必要です。
便器を置く位置
空間の次に便器を置く位置が重要です。
または便器と横壁との距離です。
よく広い空間だから左右の空間を開ける為に、中央に置いてしまう工事者がいます。
大きな失敗です。
理由を聞くと左右に空間があった方が、両方から介護が出来るからとのことです。
基本的に介護が必要な場合は、対象者の麻痺側に大きな空間を作ります。
そして対象者は麻痺が無い手で手すりなどを使用します。
健常者の状態から将来の為に、前もって空間を左右に開けておくという発想はわからなくもないですが、中途半端に両側に空間を作らない方がいいです。
狭くて使えない空間になります。
またどの壁に寄せるかも、開口部の位置や上記のように疾病等で変わってきます。
なので、1坪(180㎝×1820㎝)の空間(普通のトイレの2倍の空間)がある場合には、上記のイラストのようにおいてはいけません。
ではどの様に置くのか?
一つの目安として手すりの中心からトイレの中心線まで35㎝くらいです。
その他の例は、下図↓
なぜそうするのか?
それは、手すりやトイレットペーパーホルダーやタオル掛けなどに手が届きやすいからです。
それらは壁に設置しますので、壁が遠いと使えなくなります。
昔、手すりの上下前後の位置だけ変えずに、便器との距離を変えて使いやすさの実験をしたことがあります。
手すりは数センチ違っただけでも使いづらくなりますので注意です。
なので、壁は重要な役割を果たします。
まとめ
高齢者に対するトイレの改修をする時には2つの事に気を付けて下さい。
1つ目、立ち上がる時の前方の空間の確保
2つ目、便器は壁からの適切な位置に設置
細かい手すりの位置や疾病によるトイレの改修の詳細は、福祉住環境コーディネーター2級を持ち改修の実績のある建築専門業者や福祉関係専門職(ケアマネさん)に相談する事をお勧めします。
おわり
【マンガのまとめ&復習】
コメント